併願優遇の私立高校選びというのは、多くの保護者の方々が苦労するところです。基本的には内申点をもとに決定するわけですが、併願優遇の実施校イコール中堅以下の学校なので、進学校希望の方々が納得する学校を見つけるのは容易ではない気がします。

東京は日本で一番私立高校が充実していますが、高校入試から入学できるおすすめ進学校は、残念ながらほとんどありません。ましてや、併願優遇の実施校は実態を知れば知るほど…

塾の先生に本音を聞くのですが、まあ皆さんおっしゃりますね。「併願優遇は中卒にならないための保険だから、確実に都立高校へ進学することが基本だ」と。

「併願優遇の実施校だけには進学させたくない!」

これが正直な本音なわけです。

皆さん知っての通り、都立高校はこの10年で劇的に変わりました。東京が中高一貫校の独壇場となって、私立高校が「高校受験生は大学入試で結果が残せずにダメだ」というレッテルを貼っていたころ、都立高校の改革が始まりました。

そして10年が経ちました。今やどうでしょうか。高校入試から良い大学へ進学したいなら、都立高校を目指すことが当たり前の世の中になりました。東京の公立中学校出身の難関大学進学者は、なんと8割が都立出身者で占めるといいます(大学附属出身者除く)。この10年で、私立高校出身者は激減して、代わりに都立高校が台頭しました。

都立高校は大学進学にとても熱心に取り組み、公立中学校出身の子供たちが、中高一貫校に通わなくても、3年間でしっかりと希望進路を実現できるよう指導ノウハウを蓄積しました。私立高校が中高一貫校ばかりに目を向けたのとは対照的ですね

早稲田アカデミーやZ会進学教室、SAPIXといった有名進学塾のトップコースを取材すると、「日比谷や西が第一志望で、開成や国立大附属が第二志望」という中3生の多さに隔世の感です。大学進学志向の家庭に、私立高校は完全にそっぽを向かれてしまいました。

そこで、東京の私立高校というのは、都立高校を落ちた優秀な生徒を拾って、大学合格実績を上げようという考えに走っています。確かに、優秀な都立高校に惜しくも不合格になってしまった生徒は優秀ですからねえ。


私立高校に全然優秀な子が第一志望で入学してくれない
 ↓
そうだ、都立高校に落ちた優秀な生徒に入学してもらおう
 ↓
特進コースだ!スーパー特進コースだ!優秀な生徒よ来い来い



こんな流れです。私立高校案内をパラパラとめくって見てください。特進コース、スーパー特進コース、特待コース、国公立コース、スーパーアドバンスコース、東大・医学部コース(笑)

併願優遇校は、こんなのばっかりですよ子供も保護者も単純だから、こういう名前のコースを作ると喜ぶと思っているんですね。もはや、高校ではなくて予備校です。

一つの学校の中に、普通、特進、スーパー特進といったピラミッド型の階級格差のある学校の実態、学校に通っている生徒たちの評判はどうであるか……想像つきますか?

学校内部で生徒たちは常にクラスカーストを意識するそうです。「あいつは特進、俺はスーパー特進だ」とか、「私は普通クラスだからバカなんだ……」とか。「特進と普通だと先生の扱いが全然違う」といった先生の扱いの差も聞きますね。まあ、先生からしたらクラスカースト上位の子がかわいいのでしょう。

これが中高一貫校だと、もっと深刻で、「内進」と「外進」の格差があります。基本的に学校は「内進」のほうがかわいいです。大学合格実績を残しているのも、基本的に「内進」です。

これは実例を挙げた方が分かりやすいですね。例えば、栄東高校の2016年の東大現役合格者数の内訳です。

 内進生(約100名中)・・・15名合格
 外進生(約400名中)・・・0名合格

決して栄東高校の外進生だけが特別に実績が悪いわけではありません。どこの学校もこんなものです。中高一貫校の私立高校は、難関大学の稼ぎは内進生によるものが基本です。

「栄東高校って、高校からでもたくさん東大に合格しているのね」なんて騙されて、「都立高校よりも、私立高校の方が進学実績が良いわ~」と感じたら、私立高校の思うつぼですね

大学進学実績だけならまだしも、部活動や文化祭、体育祭といった行事までもが、「内進生」が中心的存在を果たして、幅を利かせている学校が多いというのですから、「外進生」が不満を募らせるのも無理はありません。


併願優遇の私立高校の説明会に行くと、意外と良いんですよね。校長先生の話とかを聞くと、「大学進学だけでなく、豊かな人間性を育てます!」なんてことを話されて、「都立高校よりも、私立高校の方が良いのかな?」なんて心変わりしてしまう人が意外といます。

こうなったら、私立高校の思惑通りです。保護者や中学生の誘導成功ですだって、私立高校って広告・宣伝にめっちゃお金を掛けているんですよ。

バラしていいのかな、私立高校は、みんなから集めた学費を使って、私学コンサルティング会社に依頼して、生徒や保護者を誘惑するパンフレットを作ってもらったり、生徒や保護者を感動させる説明会の台本を作ってもらってるんですよ(笑)

私学コンサルティング会社は、皆さんにどういう言葉で、どう訴えれば惹きつけることができるか熟知しています。だから、私立高校の説明会は、はっきり言って、都立高校の説明会よりも完成度が高く、魅力的に感じることが多いです。

でも……説明会だけが素晴らしい私立高校が東京には多すぎます。入学後の満足度は、都立高校の方が高いのですから。そして、「説明会を信じすぎてしまって後悔している」と話す生徒や保護者の多さには悲しくなります

不都合な情報を隠すのも、併願優遇を実施する私立高校に多く見られる手法です。さきほどの、大学進学実績の「内進」と「外進」の格差もその一つ。高校入試の説明会ではほとんどの場合、混合で提示されて、ごく一部の例外的な「外進」の難関大進学者が、あたかも一般的な合格例のごとく宣伝されるのです。

まだまだあります。併願優遇の私立高校は、部活動禁止の学校が多いのだから驚き!

高校の部活動って、人生80年のうちのたった3年間、大切な、大切な青春の1ページですよね。もう2度と経験することのない3年間の高校生活を、部活動禁止とは、拷問といえます。

なぜ、部活動禁止にする学校が多いのかわかりますか? こういう私立高校は、生徒のことを、大学合格実績を稼ぐ具材としか思っていません。もちろん、本音は絶対に公言しませんが

併願優遇の私立高校に通う生徒に話を聞くと、もう本当にかわいそう。

「友達は部活動に勉強に、充実した学校生活を送っているのに、部活動が許されない自分の高校生活っていったい何なのだろうと涙が出てくる。」

「部活動禁止であることは納得して入学したつもりでした。でも、他校に通う友達が、部活動を楽しんでいるのを見聞きして、本当に後悔しています。」

灰色の高校生活にしないためにも、しっかりと情報収集することが大切です。特に、特進クラスは部活動禁止の学校が多いようなので、要注意です。

個人的には、たとえ希望する学校のコースが、部活動に入れたとしても、同じ学校の特進クラスを部活動禁止にするような学校は、絶対に入学させたくありません。このような学校は、生徒のことよりも、経営のことしか考えていないからです。

先生の格差にも触れておきましょうか。これは、テレビや新聞でずいぶんと特集が組まれましたので、ご存知の方も多いのでしょうが、併願優遇の私立高校は、非常勤講師だらけの学校が多いです。

簡単に言うと、アルバイトや派遣社員の先生だらけということです。NHKのクローズアップ現代の特集「広がる“派遣教師” 教育現場で何が」なんかが参考になりますね。

アルバイトや派遣の先生は、正規教員よりも指導力は劣り、担当コマの授業だけ終えるとすぐに帰ってしまい、複数の学校を兼任しているので、責任を持った指導はまったくできません。

こうした状況は、東京都内の私立高校、特に、併願優遇の実施校に多いのですね。

なぜかと言えば、併願優遇のデメリットは、入学してくる生徒数の数が年度によってバラバラだからです。桜美林高校、拓殖大学第一高校、錦城高校、國學院高校、多摩大目黒高校といった主要な併願優遇の実施校の学年別生徒数を見ると、どこも年度によって100名以上の生徒数の差があることに気が付くと思います。

300名入学予定が、都立不合格者が予想よりも多くて、400名も入学してしまった

300名入学予定が、都立不合格者が予想よりも少なくて、200名しか入学しなかった


極端に生徒数が推移するのが、併願優遇の実施校の特徴です。そうすると、あなたが私立高校の経営者だったら、生徒数何名を基準に正規教員を採用しますか?

入学者が少なかったときを基準に正規教員を少なめに採用して、あとは入学者の人数に応じて、非正規教員を雇おう

という発想になるはずです。結果として、併願優遇の実施校は、非正規教員だらけになるのです。

では、あなたが経営者なら、数少ない正規教員は、どこのクラスの担当にさせますか?

特進クラスの良い子にだけ正規教員を充てて、あとのクラスは非正規教員でいいやー

という発想になるはずです。はい、先ほど出てきた、併願優遇の実施校で起こる先生格差の不満が生じる理由が分かりましたね

こういう私立高校は、先生がコロコロ変わります。目まぐるしい変化です。3年間を見据えた指導なんかまったくありません(笑)

ちなみに、都立高校は大部分が正規教員なので、先を見据えて落ち着いた指導ができますし、最近は人事の弾力化で、学校に必要な先生は10年も15年も継続して置くことが可能になっていますので、そのような心配は少ないわけです。


良心的な塾の先生なら、こういった併願優遇の私立高校の問題点をしっかりと保護者や生徒に伝えてくれるはずです。そして、こうも教えてくれるはずです。「私立高校の個別説明会には注意して!」と。

私立高校の個別説明会は、悪魔の誘惑がある場です。

私立高校の先生達は、1人でも推薦制度を利用して、さっさと自分の学校への進学を決めてくれる中学生が欲しいのです。1人決まれば、3年間学費を払ってくれるわけです。1年間の学費や諸費用が約100万円ですからねえ。大きなお金ですよね

そこで、私立高校の個別説明会では、とにかく推薦や単願受験を勧めてきます。以下は典型的な一場面です。

保護者「都立A高校が第一志望で、そちらの学校の併願優遇を考えているのですが……。」

私立高「どれどれ、内申を見てみますと…。あー、この内申だと、併願優遇は進学クラスになりますね。推薦にすれば、特進クラスへ行けますよ。」

保護者「都立A高校が第一志望なので、推薦は考えてないのですが……。」

私立高「あー、都立A高校ね。良い学校だけど、うちの学校の特進クラスの方が大学合格率は良いですよ。受験へのサポート体制も手厚いので、うちに来た方が良い大学へ行けると思いますよ。」

保護者「・・・・・・」

私立高校説明会あるあるですね(笑)とにかく、このような誘いは丁重にお断りして、惑わされないことが大切です。私立高校は、恣意的なデータを用いて、あらゆる手段で自校の優位性を主張してきますが、無視しましょう

ただし、私立高校の個別説明会もまったく無意味であるとは言えません。基準内申に1ポイント足りなかったりしたとき、個別相談でオマケしてくれたりもするのです。どうしてもというときには、個別相談してみる価値はあると思います。

さて、結論です。

併願優遇のおすすめ高校はありません。


おすすめしたいほどの良い私立高校は、併願優遇を実施していないか、完全中高一貫校で高校募集がありません。併願優遇というのは、このシステムを採用しないと受験生が集まらない学校がするものです。

例えば、早稲田実業や慶應義塾高校が併願優遇を実施しませんよね?わざわざ併願優遇をやらなくても、受験生が集まってくれるからです。

大学進学を重視するご家庭や中学生は、確実な都立高校への進学を目指しましょう。

都立トップ校(=日比谷高、都立西高、都立国立高)は駿台模試になりますが、それ以外の都立高校志望の中学生は、VもぎやWもぎの偏差値や志望校判定を基準に志望校を練るかと思います。

その際に、A判定以上の余裕がある都立高校を受験することを強くおすすめします。C判定とかD判定の都立高校に突っ込んで受験して、不合格で併願優遇の私立高校へ進学するよりも、確実な都立高校へ進学したほうが、大学進学も、充実した高校生活も手に入るでしょう。

A判定以上の都立高校へ確実に進学して、3年間しっかりと勉強して成績上位を維持し、部活動や行事に青春しながら、希望大学を目指しましょう。

併願優遇の仕組み、お分かりいただけたでしょうか?納得のいく高校入試になるよう、皆さんを応援しています

koyamadai
〈↑〉小山台高校の行事の一コマ。国公立大合格者数は100名を突破し、10年間で3倍以上に増えた躍進校。野球班は甲子園に出場し、運動会は全国屈指の盛り上がりと評判。中高一貫校でなくても、高校3年間でしっかりとした教育が行われていることが都立進学校の魅力です。